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東京高等裁判所 平成6年(ネ)2280号 判決

第二二八〇号事件控訴人・第四三三六号事件 附帯被控訴人(以下「控訴人」という。) 株式会社日本さわやかグループ

右代表者代表取締役 中園金洋

右訴訟代理人弁護士 吉峯康博

右同 由井照二

第二二八〇号事件被控訴人・第四三三六号事件 附帯控訴人(以下「被控訴人」という。) 東ドライ株式会社

右代表者代表取締役 松﨑東

右訴訟代理人弁護士 上石利男

右同 河合安喜

主文

一  被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文第三項を取り消し、同項に係る控訴人の請求を棄却する。

二  控訴人の本件控訴を棄却する。

三  控訴費用及び附帯控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を次のとおり変更する。

被控訴人の本訴各請求をいずれも棄却する。

被控訴人は、控訴人に対し、一三〇〇万円及びこれに対する平成四年四月七日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

原判決の事実摘示のとおりである(ただし、三丁裏二行目及び七丁裏九行目の各「二〇〇万円」をいずれも「二一〇万円」に改める。)からこれを引用する。

第三証拠関係《省略》

理由

一  原判決中被控訴人の一二〇万円の不当利得請求に係る部分については不服の申立てがないので、以下被控訴人の債務不存在確認請求及び控訴人の反訴請求について判断する。

二  本件の事実関係は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由欄第一の二の1(一四丁表六行目から一九丁表五行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。

1  一四丁表六行目の「成立に争いのない甲各号証」を「当事者間に争いのない事実と、成立に争いのない甲一、二の各一ないし三、三の一ないし四、四の一ないし三、五」に、同行の「、四」を「、一四」に、同丁九行目の「三一」を「二八、三一」に改める。

2  一四丁裏九行目の「用いていたが」の次に「、これに変えて」を加える。

3  一六丁表九行目のの次に、改行の上次のとおり加える。

「これら工場の開設に当たっては、控訴人は、被控訴人に工場用機械を控訴人の系列リース会社からリース契約方式で購入させた。」

4  一六丁裏一行目の「簡単なものであった」を「簡単なものであり、控訴人と被控訴人との関係は、日本さわやかグループ会則(乙三)で律されるものとされていたが、同会則によれば、退会についての規制はなく、被控訴人は、自由に退会でき、いつでも、なんらの負担なく、被控訴人との契約関係から脱することができた」に改める。

5  一六丁裏六行目の「要請したので、原告代表者は、そのころ」を「要請したが、契約書の各条項についての説明をしなかったので、被控訴人代表者は、一応契約書に目を通したものの、十分理解できないまま、契約期間満了の場合には解約一時金の支払義務は生じないものと信じ、当時控訴人の指導の下に新工場を建設し、取次店の開拓を依頼していたこともあって、同年四月六日付で」に改める。

6  一七丁表一一行目の「この場合には」を「乙が甲の名誉を毀損し、又は不実策謀等が発覚したとき等には」に改める。

7  一八丁表六行目の「提出した」を「提出し、控訴人は、これにより同年四月五日をもって期間満了により被控訴人との契約関係が終了することを了承した」に改める。

8  一八丁裏一行目末尾の「被告会社」から同七行目末尾までを次のとおり改める。

「控訴人は、平成三年二月に東京営業所の馬場真治を看板撤去の調査のため現場へ派遣し、同人は、取り外された看板の数を確認した上、これらを焼却するよう指示し、被控訴人は、右指示に従い、取り外したメイン看板を焼却処分とし、六尺看板はスプレーで塗り潰した。もっとも、被控訴人の北本市中央一丁目九二所在の営業所において、上部にハート型のサービスマークと「ホワイト急便」という文字が記載されている六尺看板が平成三年一二月一一日ころまで撒去されずに掲げられていたが、これは、トラックが右看板に衝突してその下部を破損したが、その補償交渉が未解決であったためにその撤去ができなかったという事情があったものであり、被控訴人は、右補償交渉が解決した時点でその看板を撤去した。また、被控訴人の阿部営業所では、平成三年四月一九日現在、店舗出入口上部のシート及び出入口のガラス窓にハート型のサービスマークが残存し、上尾市原市三二〇六―三所在の原市団地店においては、ハート型のサービスマークと「ホワイト急便」という文字が平成三年一二月一七日現在、袖看板の裏面に残存しているが、隣家の屋根の形に隠れており、看板としての機能を果たしていない。

このように、被控訴人が日本さわやかグループ組織から脱退した後にもその営業所の一部でハート型のサービスマークと「ホワイト急便」という文字が残存していたが、控訴人は、東京営業所の馬場を看板等の撤去について現地に派遣し、確認した後は、被控訴人に対し、本件会員契約書の一四条違反を問題とし、その撤去を求めたり、異議を述べた形跡はなく、平成四年四月六日の反訴をもって突然同条違反を理由に八〇〇万円の違約金を請求した。」

三  右事実によれば、被控訴人が日本さわやかグループ組織加盟に際し控訴人と契約した当時は、被控訴人は自由になんらの負担なく契約関係を終了することができたこと、問題の第一三条を含む本件会員契約書の作成に当たり、控訴人から各条項についての説明がなかったこと、右契約書による契約当時被控訴人はグループ組織の一員として営業すべく多額の投資を行ったばかりで、右契約を拒むことは事実上困難であったこと、右契約書の前記第一二条の契約の有効期間の定めと第一三条の任意契約解除の定めの関係は、一義的に明白とはいえず、第一二条は期間満了を第一三条は期間中の合意解除を定めたと解する余地がないわけではなく、被控訴人代表者がそのように理解したとしても無理からぬ点もあること、第一三条の解約一時金の支払が期間満了時にも支払うべきものとすると、金額が下限のみ五〇〇万円と定められ、上限の定めがないこともあって、被控訴人からの期間満了による契約関係の終了を著るしく困難なものとし、会員契約の継続を相当程度強制する結果となること、従前解約一時金は特段の事情がない限り免除されるのが例であったのに、控訴人に対しては会員契約上その他の業務に関係した非違とは直接関係のない理由で免除しないこととされたことが明らかであるから、本件会員契約書第一三条の存在を根拠に被控訴人に五〇〇万円の解約一時金の支払を強制することは、著るしく正義に反し、公序良俗に違反するものといわねばならない。

よって、被控訴人の本訴請求中解約一時金五〇〇万円の支払義務の不存在の確認を求める部分は理由があり、控訴人の反訴請求中右解約一時金の支払を求める部分は理由がない。

四  次に、控訴人の反訴請求中違約金請求について判断するに、前記認定の事実によれば、被控訴人は、控訴人との契約終了に当たり、控訴人の名称、マーク等の記載されたメイン看板を撤去し、その他のカンバン等もスプレーで塗り潰したが、ごく一部の取次店で消し残し等があったことは認められるが、その程度は極めて軽微なものであり、それ故に控訴人は、看板等の撤去については、平成三年二月に東京営業所の馬場を調査するため現場に派遣し、メイン看板の撤去、焼却処分等を確認したことにより処理済みとし、本件契約書第一四条に基づき中止を求めることもなかったのであるから、被控訴人の営業所の一部でハート型のサービスマークと「ホワイト急便」という文字が残存したことについては、不問に付したものと認めるべく、これらの残存を理由に被控訴人に対し、同条違反を問責することはできないというべきである。

よって、控訴人の違約金請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。

五  以上のとおりであり、控訴人の反訴請求中、違約金請求の一部を認容した原判決主文第三項は不当であるからこれを取り消し、同項に係る控訴人の請求を棄却し、控訴人の本件控訴はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について、民訴法九六条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 町田顯 裁判官 髙柳輝雄 中村直文)

〈以下省略〉

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